兵庫県伊丹市の道路沿いにある3本の石の門柱。
実はこれ、大阪陸軍獣医資材支廠長尾分廠の正門跡です。
(伊丹の住宅街に静かに佇む石の門柱)
大阪府伊丹市北野1丁目。
何気ない道路沿いにぽつんと立っているこの石柱は、住宅地の入り口にあります。通りすがりの人にはただの古い構造物に見えるかもしれません。
しかし、これはただの門柱ではありません。 大阪陸軍獣医資材支廠長尾分廠──かつてこの地に存在した、軍用動物を中心とした巨大な軍事施設の正門跡なのです。
(大阪陸軍獣医資材支廠長尾分廠)
この地では、1942年(昭和17年)7月に、当時の川邊郡長尾村の荒牧・荻野・鴻池の一部約10万坪が軍によって買収され、巨大な軍事施設の建設が始まりました。
そして1944年(昭和19年)1月、、大阪陸軍獣医資材支廠長尾分廠が完成します。

大阪陸軍獣医資材支廠長尾分では、軍用馬をはじめとする動物のための蹄鉄・薬品・包帯などの獣医資材が管理・供給されていました。
当時の日本軍では、馬は重要な輸送手段。戦車やトラックが不足する中、物資や兵員の移動に馬が活躍していたのです。
(終戦後は、引揚者の生活の場へ)
戦争が終わると、施設は1946年(昭和21年)2月に閉鎖されます。
その後は、外地からの引揚者のための生活施設「長尾寮」として活用されました。
時代の流れとともに建物は姿を消しましたが、正門の3本の門柱だけが今も残されており、静かに当時の記憶を語り続けています。
右の石柱には、表札がかかっていたと思われる形跡があります。

現地には説明板も設置されており、軍事施設としての役割や歴史的背景が簡潔にまとめられています。
<<大阪陸軍獣医資材支廠長尾分廠跡への行き方>>
車で行きましょう
住所:兵庫県伊丹市北野1丁目ー1
伊丹の街の静かな住宅街に残された3本の石柱。
それは、戦争中は軍事施設への入り口であり、
終戦後の人々の暮らしを支えた場所でもあります。
今では誰もが通り過ぎる場所、何気ない風景の中に、
深い物語が眠っています。




