太平洋戦争が始まるおよそ8か月前の1941年(昭和16年)4月13日、
ソ連の首都モスクワで日本と旧ソ連との中立条約が締結されます。
日本全権の松岡洋右外相，駐ソ特命全権大使建川美次とソ連全権のソビエト外務人民委員V.M.モロトフの間で調印、締結した条約です。
この条約は、日本、ソ連の相互不可侵や一方が第三国と交戦した場合に、他方は当該紛争の全期間にわたって中立を守ることを約したものです。
有効期間は5年で1946年4月24日に期間満了することになっていました。
同年12月に日本が米英などと戦争状態に入ったのちも日ソ間の中立は維持されます。
(条約の内容)
日ソ中立条約は4ヵ条から成り，(1条) 両国間で平和友好関係を維持し，相互の領土保全，不可侵を尊重すること，(2条)締約国の一方が第三国によって軍事行動の対象とされた場合には，他方はその紛争の全期間，中立を守ること，(3条)有効期間は5年，期間満了の1年前に予告をもって廃棄通告しうる。有効期間満了1年前までに両国のいずれかが廃棄通告しなかった場合は5年間自動延長されるとしているなどを規定しています。
さらに、満州国とモンゴル人民共和国、双方の領土の保全と相互不可侵を義務付けた
声明書で構成されています。。
(条約締結の背景)
この条約が結ばれた1941年は欧州ではすでに第二次世界大戦が始まっていてドイツ軍が快進撃を行っていました。
一方アジアでは日中戦争の真っ最中でした。日本は、1939年に起きたノモンハン事件での経験から北進をあきらめ、南進にかじを切ります。
1940年7月に成立した第2次近衛内閣の松岡洋右外相は，日同期三国軍事同盟を結び，
さらにソ連を交えた日独伊ソ四国協商を成立させることで，アメリカに対抗しようと
考えていました。そしてアメリカをアジアから手を引かせて日中戦争や南進政策を有利にすすめようという構想でした。
そのため、日本は1940年(昭和15年)9月に日独伊三国同盟を締結します。
【日独伊三国軍事同盟について書いたブログはココ】
その後、ソ連に中立条約の締結を提案します。
一方、ソ連は1939年(昭和14年)8月に独ソ不可侵条約を締結していたものの、9月には
ヨーロッパで戦争が始まっていたので、日本とドイツによるアジアとヨーロッパの
二正面戦争を避けるために日本の提案に応じます。
このように当時の国際関係論やミリタリーバランスが関係して日ソ中立条約は1941年(昭和16年)4月13日に締結されます。
（松岡洋右とは）
日ソ中立条約を調印した松岡洋右は、オレゴン州立大学卒業。帰国後に外交官となり、
中国、ロシア、アメリカなどに勤務しています。また南満洲鉄道株式会社の理事や副総裁、さらに満鉄総裁にも就任しています。
国際連盟脱退や日独伊三国同盟、日ソ中立条約締結に関係しています。
【写真：国立国会図書館ウエッブサイトの「人間松岡の全貌」より】
(条約破棄は国際法違反）
日本ソ連双方の代表が調印して成立した日ソ中立条約は国際条約です。
しかし、1945年(昭和20年)8月9日、この条約はソ連により一方的に破棄されます。
この国際法違反は今に至っても何の罰則も課せられていません。
またソ連から宣戦布告を受けますが、この時、駐ソ日本大使館から日本本土に向けての電話通信回線は全て切断されており、連絡がつきにくい状況となっていました。
ソ連政府は佐藤尚武駐ソ連大使への通告から約1時間後の日本時間の8月9日午前0時に
日ソ国交断絶を通告し日本領域への武力侵攻を開始します。
その4時間後に日本政府は、モスクワ放送や米サンフランシスコ放送などを傍受しソ連の対日宣戦布告を確認します。
さらにソ連侵攻から35時間後の8月10日午前11時15分に、東京のヤコフ・マリク駐日大使が東郷茂徳外相を訪れ正式な宣戦布告文を届けます。
終戦後にもソ連による戦闘は続きます。ポツダム宣言を受諾したものの日本はソ連との戦闘に巻き込まれます。
・・というわけで4月13日は
モスクワで日ソ中立条約が締結された日です。
